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記事: blog【鈴木正文さんインタビュー】「Majun Plus」の門出に寄せて #2

blog【鈴木正文さんインタビュー】「Majun Plus」の門出に寄せて #2

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「Majun Plus」の門出に寄せて #2

鈴木正文

 

沖縄県の公式ホームページ上の説明を引くと、「かりゆしウェア」を名乗るには、①沖縄県産である②沖縄らしいデザインである、という2つの条件を満たさなければならないのだけれど、より具体的には、沖縄の伝統染織物や沖縄の文化、そして沖縄の自然などをモチーフにしたデザインであることが求められる(ちなみに「majun plus」ブランドのアイコンはイリオモテヤマネコのシルエットである)。
 沖縄特有の強烈な真夏の光に映えるシャツやドレスから成る「かりゆしウェア」の起源を尋ねると、沖縄の本土復帰前の1970(昭和45)年にさかのぼらねばならない。当時の沖縄の観光連盟会長が、沖縄の夏を快適に過ごすために、観光客需要を掘り起こすねらいもふくんで「沖縄シャツ」という名称の開襟シャツを発案し、それを商品化したのがはじまりだった。ハイビスカスの花やデイゴの花の図案、さらには沖縄の伝統工芸品である琉球紅型(びんがた)や琉球絣(かすり)の柄をあしらったデザインが特徴だ。
 いっぽう、「ヒピハパ」は、赤道直下の南米・エクアドルのヒピハパという土地で採られるヤシ科のパナマ草の通称に由来する。この草は最上級のパナマ帽の原材料であることが知られており、加賀さんは、そのむかし訪れたニューヨークの帽子専門店でヒピハパの名称を知った。その語感と綴りが気に入り、1992年に創設したみずからのブランド名を「Jipijapa」にした。以来、「ふつうだけど、ちょっと面白い」をキーワードにコレクションを展開し、チャイナカラーのシャツや防弾ヴェストに使われるケヴラー素材のセーターなどで話題を呼びつつ、モスキートネットを使用したウインドブレーカーをOasisのリアム・ギャラガーがステージ 衣装として着用するなどのことがあり、国内外で知る人ぞ知るユニークなブランドに育っていったのである。
 南国の太陽に祝福された小麦のような褐色の顔に満面の笑みをうかべて僕を迎えてくれた1972年生まれの大城さんは、日進商会の2代目社長である。
 日進商会の前身は、大城さんの祖父の長男と次男のふたりの奥さんが戦後間もない1950(昭和25)年にはじめた洋服生地販売の個人商店が起点となった卸売の問屋で、その2年後に同名の合名会社が設立された。それが1985(昭和60)年に株式会社化して大城さんの父親が初代の社長になった。①学生服の製造・販売②スポーツウェアおよび企業ユニフォームの販売と、③かりゆしウェアを中心としたカジュアルウェアの製造・ 販売という3分野で事業に取り組んでおり、大城 直也さんが2代目の社長になったのは2018年のことであった。
 その経営理念は、「快適な価値ある商品とホスピタリティを創造し、地域社会に貢献する総合繊維産業」の企業であること、という。制服などの製造・卸売業が中心を占めた事業は、2000年のか りゆしウェア市場への参入に伴って小売業をも包摂するものへと拡大し、現在では沖縄県内に3店の「Majun Okinawa」の実店舗を構え、さらにオンラインショップも積極的に展開しているという。こうしてエンド・ユーザーとの直接的な接点を増やして、事業の発展をはかっているわけである。
 こんかいのヒピハパとのコラボによる「majun plus」コレクションの創造は、卸売中心の企業から脱皮して小売業をも主要事業のひとつとする「総合繊維産業」への、さらなる飛躍を推進する ためであるという。東京などの本土の主要都市での店舗展開や、すでに開始されている海外マーケット開拓などのいっそうの強化も、大城さんの視野には入っている。
 「かりゆし」ということばひとつにすら知識とは呼べないようなあやふやな知識しかもっていなかったじぶんを僕は恥じている。そして、加賀さんと大城さんが力を合わせてつくっていく「majun plus」のコレクションのなかに、「沖縄」のインスピレーションによってアップデートされた「そうめんシアサッカー」的な、「ふつうだけれどふつうではない」なにかが生まれるのを心待ちにしている。さらに、この大城・加賀コラボが、「本土」などという沖 縄を「別物」化したうえで成立している地理的でも制度的でも、そして心理的でもある排他的な呼称 を、なきものにすることにつながっていくことを希望する。
 「majun plus」のアイコンであるイリオモテヤマネコは絶滅危惧種であるという。しかし、産声をあげた「majun plus」は、「本土」と「沖縄」とをファッションで結び、(すくなくとも僕たちファッション好きのこころのなかでは)「本土」を絶滅種にしてしまうであろうことを信じる。


 

前の記事はこちら 「Majun Plus」の門出に寄せて #1

 

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