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blog【鈴木正文さんインタビュー】「Majun Plus」の門出に寄せて #1
「Majun Plus」の門出に寄せて #1
鈴木正文
「かりゆし」ということばが沖縄の方言であることは知っていたけれど、それが「めでたい」とか「縁起がよい」という意味であることは知らなかった。2000年7月、沖縄県名護市で開かれた「主要国 首脳会議」(いわゆるサミット)のさい、主催国の日本をふくむ参加9カ国の首脳がそろって着用に及んだ半袖の開襟シャツが「かりゆしウェア」と呼ばれるシャツであったこと、そしてそれは、沖縄における「夏の正装」として通用しているのみならず、ビジネス・ウエアとしても広く沖縄の人々に愛 用されていることとともに、大城直也さんに教えてもらった。
大城さんは、「かりゆしウェア」のナンバーワン・ブランドである「MAJUN」(マジュン)を展開する沖縄県糸満市に本社を置く「日進商会」の代表取締役社長である。ちなみに、「マジュン」もまた沖縄のことばで、「一緒」「一緒に」を意味するという。MAJUNのかりゆしウェアには、めでたさをみんなで共有したいという願いが込められている、とその名前は教えている。
大城さんと会ったのは、東京は荒川区東日暮里の「Jipijapa」(ヒピハパ)というファッション・ブランドのショウルームで、であった。10月なかばだというのに、まるで沖縄にいるかのように蒸し暑い、よく晴れた昼だった。
Jipijapa=ヒピハパは、伊勢丹新宿店や各地のセレクト・ショップなどで扱われている通好みのファッション・ブランドで、1992年にデザイナーの加賀清一さんが立ち上げた。ブランド立ち上げのそのころから面識があり、以来、なんとなく親しい間柄の加賀さんのつくる服は、一見ふつうでも、よく見るとふつうじゃない。当り前のものを当り前につくってしまえば退屈というか平凡のそしりをまぬかれないけれど、かといって突飛なものを突飛につくれば、それはたんに突飛なだけだから余計につまらない。当たり前であってしかも当たり前でない、あるいは当たり前でないのに当たり前、という矛盾がせめぎ合う境界線上で戯れている ――。そんな感じの服が加賀さんのつくる服で、僕が盛夏によく着る加賀さんの手になる3つ揃いのシアサッカー・スーツは、その好例である。「そうめんシアサッカー」なる加賀さん考案の、コットン地で仕立てたブルー・ストライプのスリーピース・スーツのジャケット、ヴェスト、トラウザーズのそれぞれ左側の前身ごろのセンターあたりには、1本の、あざやかな赤いストライプがひと筋走っている。真っ白なそうめんのひと束のなかに1本だけすっくと立った赤い麺のように……。「ふつうだけどふつうじゃなくて、ふつうじゃないけどふつう」な唯一無二の加賀さんファッションは、そんなふうにちょっとユーモラスで、そうとうにオシャレなのである。
その加賀さんが、僕を大城さんに引き合わせてくれたのであった。
それというのも、かりゆしシャツの一枚一枚を職人の手で縫い上げているというこだわりの強いブランドである「MAJUN」と、ユニークさでは他にひけをとらない「ヒピハパ」が、「majun plus」という新ブランドでコラボをした新コレクションが、来年の春夏シーズンから展開されることになったからだ。